神道研究室

在野の神道研究者が神社の問題に鋭く切り込みます

2023-01-01から1年間の記事一覧

懲戒処分って簡単ではないですよ

ご質問 東京都神社庁で発生した金銭上の非違行為(横領)疑惑に関する私の記事(「東洋経済」オンライン読後評 - 神道研究室)に以下のような質問が寄せられました。 まず疑惑の職員を出勤停止にして、証拠が集まったら被害届を出す。そうすればあとは警察が…

「東洋経済」オンライン読後評

『東洋経済』野中大樹記者による分析 東京都神社にて発生した職員(M氏)による業務上横領疑惑について、『東洋経済』の野中大樹記者が下記リンクのように報じています。 神社庁幹部による約3000万円の「横領」が発覚 | 災害・事件・裁判 | 東洋経済オンライン |…

花菖蒲ノ會の矛盾した論理

庁規から独立できない憲章 花菖蒲ノ會は神社本庁憲章が宗教団体神社本庁の最高法規であり、憲章に基づき神社本庁を運営せよと主張しています。 しかし、憲章には誰が評議員になるのか一切書かれていません。それが書いてあるのは庁規です。つまり庁規がない…

上げ馬神事という文化

へライザー総統の批判 YouTuberの「へライザー総統」氏が三重県の多度大社の上げ馬神事に対し批判的な動画を発信していますが、いくつか誤認がみられるので、その点を指摘したいと思います。 上げ馬神事 に 批判殺到 !上げ馬 反対 多度大社【メルズーガ Twi…

神政連の公約書について

公約書は当たり前 2023年春の統一地方選挙において神道政治連盟埼玉県本部が選挙で推薦(応援)する候補者に「公約書」を送り、署名を求めていたことが報道されました。 【独自】神社庁が統一地方選候補に送りつけた「公約書」の中身、LGBT増進法案国会提出…

宗教団体神社本庁という論法

「宗教団体神社本庁」という論法 花菖蒲ノ會は会報10号において以下のように主張しています。 「統理が指名するのは「宗教団体神社本庁の総長(A)」であって、「宗教法人神社本庁の代表役員(総長のあて職/B)」ではありません 要するに、宗教団体として(=…

外苑再開発に反対する人に考えてもらいたいこと

坂本龍一は反対していたけれども 明治神宮外苑の再開発に対し反対していた故・坂本龍一氏の遺志を継ぐ形で反対集会が行われました。 神宮外苑の伐採、アーティストら反対集会「坂本龍一さんの遺志を」 | 毎日新聞 坂本龍一氏が生前に都知事などに送っていた…

本庁問題とキャンセルカルチャー

最初から違和感 百合丘職舎売却をめぐる背任疑惑が報道された時に私は強い違和感を覚えました。 職舎を意図的に安く売ったのであれば、その損失額を弁償しろという話になるのが普通です。それなのに百合丘職舎では弁償よりも総長辞任が叫ばれていたので、「…

神社本庁統理の条件

神社本庁統理という役職 神社本庁には、宗教法人のトップ(代表役員)である総長と宗教上のトップである統理の2人のトップがいます。厳密には統理と総長の上に総裁がいますが、役員会に参加したり、決裁に関与するのは統理・総長までで、総裁は運営には完全…

花菖蒲ノ會会報10号11号読後評

宗教界の数十年の努力を無にする行為 オウム真理教事件をうけて宗教法人法が厳しく改正されました。同時に日本の宗教界は宗教そのものの社会的信用を取り戻すべく努力してきました。神社本庁でも創設以来、宗教法人法を遵守し、各種手続きに遺漏がないように…

神社護持の一方策

どうでもよい問題 全国の神社は終戦直後に匹敵するような危機的な状況にあります。全国をみまわしても「うちの神社は100年後も安泰だ」と言う宮司・総代はおらず、「氏子が減ってしまって」、「若い人がいないので祭典ができない」など将来に対しネガティブ…

奥ゆかしさの大罪

表面上は遠慮する 事務総長に辞任を勧めた評議員の回顧録のなかに、次のような興味深いエピソードも語られています。ある人物は次期事務総長と推す声もあり、自身も事務総長への意欲があったにもかかわらず、現任の事務総長に対しては「自分は高齢で重責を担…

本庁問題の本質

直接対決を避ける神職 とある評議員の回顧録に、理事会で事務総長の意見に満場一致で賛成しておきながら、裏で撤回と辞任するように事務総長を説得してほしいと頼まれたことがあるという述懐があります。神職にはこのように表で賛同しながら裏で根回しするこ…

藤原登コラム27号読後評

はじめに 今回は藤原登氏のコラム「『神社本庁憲章』を否定して悪あがきを継続する田中-打田体制-自壊する前に、神道人の良心で自浄への道を切り拓け!-」(月刊「レコンキスタ」令和5年4月号所収)について書評します。 『神社本庁憲章』を否定して悪あが…

『東神』読後評

東京都神社庁による続報 東京都神社庁の職員による金銭上の非違行為について、①『週刊現代』2023年3月11・18日合併号、②藤原登「明らかになってきた田中・打田一派の卑劣極まる手口の数々!-正常化陣営は、神社本庁再生の理念を堂々と掲げよ(後)」(月刊…

「どうする家康」の「お葉」について

「お葉」とは誰か NHK大河ドラマ「どうする家康」第10話に側室の「お葉」という人物が登場しました。 「お葉」というのは劇中の名前ですが、鵜殿氏の娘であること、家康との間に娘(おふう)を授かっていることから実在の人物である「西郡局(にしのこおりの…

『週刊現代』(令和5年3月11日号)読後評

週刊現代の記事の概要 『週刊現代』(令和5年3月11日号)の「事情通」において、東京都神社庁のトラブルについて論述しています。概要は以下の通りです。 1月17日付で東京都神社庁の職員が「金銭上の非違行為」を理由に解雇された まだ全体像が見えてこない…

本庁役員の選考委員会とは?

役員選考委員会はいつからはじまったか 選考(詮衡)委員会の古い記録は「神社新報」(昭和23年4月5日号1面)に見られます。それによれば 次で宮川氏の辞任に伴ふ補欠選挙に移つたが長野県武藤氏の発案により詮衡委員会で慎重審議することになり、神宮一名各…

明治神宮外苑は「コモンズ」か?

外苑再開発をめぐる議論 明治神宮外苑の再開発について、さまざまな意見がありますが、重要な論点に「外苑はコモンズか否か」があります。 「Commons」というのは共同で所有し管理する土地のことです。 今回は明治神宮外苑の開発の決定権が誰にあるのかとい…

神社はお願いするところじゃないの?

神社でお願いをしてはいけないのか? ネット上で「神社ではお願いをすべきではない。神社は感謝をするところだ」とか「神社ではお願いをするところではなく、誓うところだ」という意見を見かけます。今回はこれを学問的に見ていきましょう。 エビデンスは 神…

氏(氏族)の神を調べる方法

本当の氏神? 最近、「本当の氏神を知りたい」という声を耳にします。 「地域の神」ではなく、源氏にとっての八幡宮のような「一族の神」を知りたいという要望です。 現在、「氏神」は次の3つの意味で使われています。 一族の神=本来の意味の「氏の神」 生…

先祖の調べ方

家系図をつくってみませんか? こんな宣伝文句をよく見かけます。では実際に先祖はどこまで遡って調べることができるのでしょうか? 歴史を研究してきた者として私の意見は、学問的に確実な方法で調べて明治時代まで遡ることが出来ればいい方です。 このよう…

神道を独学するならまず読むべき本

初学者からベテラン神職まで一生活用できる本 よく「神道について学びたいのですが何から読めばいいですか?」という質問をうけます。 一般常識程度にかる~く知っておきたいのではなく、本格的に勉強したいのであれば、紹介する本は 國學院大學日本文化研究…

令和5年2月15日 毎日新聞「水説」を読んで

https://jijyo.jp/page.php?id=369 毎日新聞の古賀攻氏の政治コラム「水説」において、建国記念日を「明治政府が定めた架空の日」と評している。少しでも神社に対する敬意があれば「神道において初代天皇が…」とか、「神社に着いたのは祭典後だったが奉祝の…

一君万民という尊皇の基本

その表現おかしくないですか? 花菖蒲ノ會やその支持者のネット投稿を見ると 統理に臣下が異見するとはなにごとだ 統理の指示に承詔必謹せよ などの言説を見かけます。これらは尊皇の基本である一君万民から明らかに反しています。そこで今回は尊皇の基本で…

冗長な質問やコメントをしないために

はじめに 今回は一般向けの学術シンポジウムなどだと、慣れていないせいか冗長な質問や的外れなコメントが寄せられることがあります。今回は、そういう質問やコメントをしないためには、どういう点に注意すべきか、自戒の意味も込めてまとめてみました。 ①自…

地元とトラブった神主は悪か?

記録に残しにくいテーマ 他所から来た神主が地元住民とトラブルになるということは今も昔もあります。 「今まで問題なくやってきたのに、他所から来た神主がひっかきまわして困る」と地元住民が証言している場合、その主張を鵜呑みにしていいのでしょうか? …

郷土史家・在野研究者の功罪

郵便局で怒鳴り散らす「大先生」 先日のことだが、郵便局で怒鳴り散らす70代くらいの男性がいた。話を聞いていると次のような用件だった。 昭和30年ごろに特殊な仕事をしていた住民がいた そのことを郷土史に書き残してやりたいが、あだ名しかわからない 家…

花菖蒲ノ會の路線だと神社はどうなるのか?

世俗法を重視してきた神社神道 戦前の神社は内務省の所管する公法人であるため、内務省に陳情することはあっても法令は遵守してきました。三条教憲にも「朝旨遵守」が明記されています。「朝旨」とは「朝廷の意向」の意味であり、要するに国家の意向(=法令…

「認知プロファイリング」と神社本庁問題

暇空茜氏の「認知プロファイリング」 令和4年11月からネット上で話題となっている人物に暇空茜(ひまそらあかね)という人物がいます。 彼の主張がどのようなもので、どのような話題なのかはYOUTUBEで検索してみて下さい。 彼は「認知プロファイリング」とい…