神道研究室

在野の神道研究者が神社の問題に鋭く切り込みます

白いベンツと寿司屋

はじめに

今回は「1年前の7月7日、旭川地裁に現れたのは・・・・|自浄.jp」についてです。この記事なかでは3点の画像が示されています。

  1. 令和4年7月7日、M氏が運転手として𠮷川前副総長・小野常務理事とともに旭川地裁に訪れたことを報じる「東洋経済オンライン」記事(令和5年5月20日配信)
  2. 令和4年7月6日にM氏が東京都神社庁の400万円を個人口座に移したことを示す令和5年6月19日東京都神社庁協議員会資料
  3. 令和4年7月7日、旭川の寿司屋に降りる人物(記事は小野常務理事と説明する)を撮影した写真

そして、この3点を論拠として以下のような疑問を「自浄.jp」を投げかけています。

400万円の着服は、”旭川&札幌”行きの軍資金だったのか? ベンツのレンタカー代の出所は?
M氏の着服金額の使途について、様々な憶測が飛び交っている。

今回はこの疑問について論理的に推理していきたいと思います。

なぜ札幌に行ったか?

まず𠮷川氏は広島県、小野氏は東京都の神職です。距離から考えて2人とも旭川へは空路を利用したと考えるのが自然です。そこで空路を調べてみますと、旭川空港から広島空港への直行便は運行していませんが、新千歳空港からだと直行便があります。経由すると90分以上も多くの時間がかかる上に乗り換えするのはメンドクサイので、𠮷川氏は新千歳空港で直行便を利用したいと考えるでしょう。

羽田空港を利用するであろう小野氏から見て、新千歳空港の方が数が多いのですが、旭川空港でも直行便があります。そのため小野氏にとっては旭川空港の方が移動費が安く済むのですが、心理的に小野氏にも𠮷川氏にも旭川での宿泊を避けたい事情があります。

なぜならば旭川は裁判で争った芦原高穂氏の地元だからです。芦原氏は旭川神社の宮司であり、神職という仕事柄、旭川に広い人脈がある。立ち寄った居酒屋や宿泊したホテルの従業員が裁判で争った相手の友人・知人かもしれない。そんな旭川では気持ちが休まらないから別の場所で宿泊したいと思うのが自然でしょう。また裁判で争っている相手の地元では今後の裁判の相談もできません。そのため小野氏も新千歳空港経由で旭川に行き、札幌方面で宿泊したいと考えても何ら不自然ではありません。

このように札幌方面に移動したことには旭川から離れていて、新千歳空港に近く、宿泊施設も多いなどといった合理的な理由があります。

寿司屋の写真

以上のような理由から裁判が終わったら札幌方面に直行するのが最善なのですが、ベンツは旭川の寿司屋に停車しました。ここで食事を摂ったのは時間的に札幌まで食事を我慢できなかったという理由でしょう。

この寿司屋ですが、写真をもとに検索すると「コスパ最高」などといったワードが出てくるリーゾナブルなお店だそうです。メニュー表を見ても「接待費」の範囲で充分に飲食することが可能です。

ちなみに写真の人物(小野常務理事と言われている)はカメラの方を向いていません。被写体はカメラを認識していないのです。しかも降車するタイミングでシャッターが切られていますから、撮影者はベンツが停車した時点でカメラを構えていたことになります。そうすると撮影者はM氏たちがこの寿司屋に入るのを事前に知っていたか、あるいは裁判所から寿司屋に入るまで追跡したということになります。そのあと「130㎞も離れた”札幌”方面に向かった」と述べていますので、裁判所を出てから寿司屋経由で札幌方面に向かったと判断できる地点まで何者かが追跡していたと考えるのが妥当でしょう。

こうした状況から考えても旭川ではなく、別の場所に宿泊したことには合理性があったといえます。

ベンツのレンタカーはいくらか?

「自浄.jp」の記事はベンツのレンタカー代の出どころを気にしていますが、ベンツだからと言ってさほど高い金額ではありません。参考までに新千歳空港近くのレンタカー店(ヤナセプレミアムカーレンタル千歳 | ニッポンレンタカー)の価格を調べますと、「Mercedes-Benz A180」、「Mercedes-Benz GLA 220」、「Mercedes-Benz CLA180 Shooting Brake」の24時間のレンタル料は20,570円です。

他の車種と比較しますと、クラウンが27,000円、ステップワゴンが13,200円、プリウスが10,450円です(すべて24時間)。

電車を利用した場合、新千歳空港から札幌駅経由で旭川駅まで行くと片道5,480円です。3人往復ですと32,880円です。ベンツのレンタカー代の方が安いです。もちろんレンタカーだとガソリン代や高速代もかかりますが、電車をつかったとしても旭川駅から旭川地方裁判所までの片道4キロのタクシー料金がかかります。金額的にはベンツのレンタカーと電車の間にほとんど差がないのです。

またレンタカーだと手荷物の持ち運びが楽、電車の乗り換えなどで待ち時間が生じないといったメリットもあります。𠮷川氏(S25)も小野氏(S26)も70歳を超えていますので、電車を乗り継いで旭川へ行くよりも身体的負担の少ないレンタカーでの移動を選択したことには合理的な理由があります。

このようにベンツのレンタカー料金は正規の出張経費として認められる内容です。

憶測の域を脱しない

以上のように寿司屋もベンツも出張経費として認められる範囲のものです。経費で落とせるのであれば、私的費消(横領)する理由はありません。そのため東京都神社庁の400万円が白いベンツのレンタカー代や寿司屋の代金になったとは、状況的にも考えにくく、何より証拠もなく、憶測の域を脱しません。

「自浄.jp」の記事はM氏が運転するベンツが追跡されていたことの証明にはなりますが、3人の移動手段となった白いベンツのレンタカー代と寿司屋の代金が不正な金銭であったことの証明にはなっていません。