疑惑は深まった?
神社本庁をめぐる疑惑について『週刊ダイヤモンド』(2022年7月2日号)「ダイヤモンドオンライン」は次のように報じています。
https://diamond.jp/articles/-/305089
そして、その記事を引用し「神社本庁の自浄を願う会」は次のように論じています。
https://jijyo.jp/page.php?id=349
これらの記事を読むと、神社本庁を中心に権力者が結託して不正をしているかのような印象を受けるでしょう。
しかし、不正疑惑を論証できていない、というのが研究者としての私の感想です。
不正疑惑なのに欠けているもの
一般的な背任行為や経営者の不正では、
Aが業者から不当なリベートを受け取った
〇〇円の不正な経費が支出された
といった具体的な「悪事」の情報が流れます。
ところが本庁問題では、もう数年も裁判をやっているのに、誰が具体的にどういう悪事を働いたのかという話が出てきません。
これはおかしな話です。
改めて記事を読んでみよう
「ダイヤモンドオンライン」の記事は、神社本庁、政界、官界、財界の誰と誰が親しいと論じていますが、「親しい=共犯」ではありません。もし「親しい=共犯」ならば、犯罪者の同級生や親族すべてが共犯ということになってしまいます。普通に考えてそれはありえません。
疑惑を論証したいのであれば、具体的にどういった不正があったかという証拠をまず提示しなくてはなりません。人間関係は不正が行われた背景であり、不正の証拠を補強する情報です。ところがこの記事は具体的な証拠がない状況で、人間関係から不正疑惑を論じています。先入観に基づく想像の域を脱していません。
しかも、ここで論じている人間関係はこじつけの感が強い。政治家が支持団体の役員と交流するのは当たり前のことですし、政治家と官僚も仕事上の付き合いが生じるのは当然のことです。疑惑を追求したいのであれば具体的にどの不正にどのような協力関係があったのかを証明しないといけません。
だから「ダイヤモンドオンライン」も「神社本庁の自浄を願う会」も神社本庁役員の不正を追求したいのであれば、誰がいつ、どのようにして、いかなる不正をしたかを証拠とともに論じる必要がありますが、できていません。
そして、「ない」という悪魔の証明は困難であり、立証責任は追及する側にあります。
情報は公平に
「神社本庁の自浄を願う会」は令和4年11月に『週刊ダイヤモンド』の記事をホームページで紹介しています。そこには下記文章が引用されています。
「職舎(前出の神社本庁の不動産)の売却は妥当だった」と報告書で結論付けた。だが、東京地裁はその報告書を「採用できない」と一蹴している。
内部調査の報告書を採用しなかったのは事実ですが、東京地方裁判所は背任は認められないと結論づけています。そのため記事のこの箇所は判決の都合の良い情報だけを引用しています。
都合良い情報だけを組み合わせた論理では論証にはなりません。
そもそも関係者による内部調査が裁判資料として採用できないのは当然のことであり、調査委員会メンバーに否定的評価を下すものではありません。
裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan
【事件番号】平成29年(ワ)第35106号
【事件名】地位確認等請求事件
【裁判年月日】令和3年3月18日
【裁判所名】東京地方裁判所
まとめ
このように本庁問題では怪しい、おかしいという主張だけが繰り返されて、決定的な証拠が出されていません。主観的に人間関係を解説しただけでは状況証拠にもなりません。