神道研究室

在野の神道研究者が神社の問題に鋭く切り込みます

神社に属性ってある?

属性の合う神社

よく「神社には属性があって、相性のいい属性の神社に参拝しないと御利益がない」という情報がネットにあります。この属性を「繭気属性」(けんきぞくせい)と言うそうです。この属性の起源と有効性について学問的に検討してみましょう。

 

属性の調べ方

属性の診断は以下の手順です。

  1. 誕生日を一桁になるまで足していく(2022年9月18日なら2+0+2+2+9+1+8=24、2+4=6 この場合は6)
  2. 計算結果に血液型別に数字を足す(A型なら1、B型は2、AB型は3、O型は4)二桁の数字になったら最初のように足す
  3. その結果が1か6なら「地」、2か7なら「水」、3か8なら「火」、4か9なら「風」、5なら「空」の属性になる

相性のいい属性は以下の通りです。

  • 地・・・火、風
  • 水・・・風、空
  • 火・・・空・地
  • 風・・・地、水
  • 空・・・水、火

つまり自分が「地」の属性なら、「火」か「風」の属性の神社に参拝すればいいとなります。どの神社がどの属性かはネットなどで掲示されています。

 

神社の属性は伝統か?

結論から言えば、「繭気属性」というのは平成の後期に生まれた新しい占いです。

まず生年月日を足していくというのは、西洋の占いの数秘術です。

西暦を用いている時点で江戸時代にはなかったことは明らかです。

 

次に名称は「地、水、火、風、空」は仏教の五大です。「木、火、土、金、水」の陰陽五行説を採用しなかった理由が不思議ですが、西洋と東洋の占いをミックスしてつくった占いだということがわかります。

 

最後に「どの神社がどの属性か?」という問題ですが、私も江戸時代の神社の古文書(縁起)をそれなりに見てきましたが、「うちの神社の属性は〇〇である」と書いてある古文書に出会ったことはありません。國學院大學皇學館大学の教科書にも属性一覧表なんてありません。

「〇〇神社の属性は〇〇である」という根拠は古文書になく、どうしてその神社がその属性なのかは「繭気属性」を主張している本やHPの執筆者にしかわかりません。

以上のように、属性というのは平成のスピリチャルブームやパワースポットブームのなかで現れた占いであることは明らかです。

 

属性は有用か?

新しい方法だからといって役に立たないとは限りません。しかし、新しく開発したものであるならば、伝統や秘伝であるかのような誤解を与えるような表現は避け、新しく優れたものを開発したと堂々と主張すべきでしょう。

 

「繭気属性」は「A型は同じA型かO型と相性がいい」と同じレベルの占いだと私は考えています。「神慮」という言葉があるように神祇には意思があります。そのため神祇に気に入られる人、そうでない人があることを示す伝承は各地に伝わっています。そういう意味において、神社との相性というのはあるでしょう。しかし、神祇にも意思がある以上、相性を属性で確定することはできません。

A型の人は同じA型の人と相性がいい傾向にあるが、必ずしもA型の人同士が意気投合するとは限らないように、「繭気属性」で相性がよいと診断されても神祇に気に入られない可能性はある訳です。

 

属性が絶対的なものでない以上、真摯に祈る、参拝の回数を増やすなど神祇に気に入られる努力をする方が理に適っていると思います。