神道研究室

在野の神道研究者が神社の問題に鋭く切り込みます

東京新聞は社会の公器です

新聞は社会の公器

選挙で有権者が政治家を選ぶ際に正確な情報が必須です。他にも経済活動や社会活動、人間のあらゆる活動の判断基準として情報は重要であり、近代以降、市民に正確な情報を提供する重要な使命を担ってきたのが新聞であり、新聞は「社会の公器」として扱われてきました。

そうした事情も考慮され、週2回以上、定期購読として配達される新聞には消費税も軽減税率8%が適用されます。新聞は社会の公器として税法上の恩典を受けているのです。

また記者クラブなど新聞は情報を得やすい環境が与えられていますし、新聞記者が会見している政治家に対して強い態度で質問するのも新聞が社会の公器だからです。

外苑再開発

そんな社会の公器の一つである「東京新聞」は明治神宮外苑の再開発に関し、参加制限のない開かれた説明会が望ましいと主張しています。

神宮外苑再開発の説明会で参加者を制限 個人情報が必須、第三者に提供も 三井不動産「制限なしは難しい」:東京新聞 TOKYO Web

なら「社会の公器」であり、強い影響力を有する「東京新聞」の在り方についても広く社会の意見を採り入れるべきではないでしょうか?

つまり新聞社の運営を株主だけで決めるのではなく、新聞社の株主総会の参加制限を撤廃し誰でも傍聴者として参加できるようにするか、すべての定期購読者を招いて論説委員が社説・論調・取材姿勢など編集内容について説明する「定期購読者説明会」を開催してはどうでしょうか?

「社会の公器」なのですから、公的責任も果たすべきです。

もちろん批判的な意見を述べる定期購読者がいても真摯に回答してもらわないと困りますし、途中で打ち切るなんて言語道断です。「ちょっと待ってください。まだ説明が残ってますよ」と聴衆からクレームが入ります。

これは私のおふざけの意見ではなく、「東京新聞」が外苑再開発事業者に要求しているのと同じことを言っているだけです。新聞社が率先垂範するならその論調に重みが増します。

報道の自由と信教の自由

新聞社の運営や編集に広く市民を意見を反映すれば中立公平性が高まることはあっても阻害されるはずがありません。では、なぜ今まで株主総会論説委員の選出、編集会議を制限した状態でやってきたのか?

それは株主の利益、ジャーナリストとしての編集ポリシーを守るためには、それを共有する人に制限して合議するしかないからです。つまり絶対的に中立公平な新聞というのは机上の空論でしか存在しないのであり、論説委員・編集長・記者の主張や着眼点・問題意識を自由に表現する余地が新聞にはあって、それが各新聞の個性を生んでいます。そうした個性を含めて新聞は社会の公器だと認められているということです。ただ社会の公器という地位は無条件に与えられるものではなく、市民の支持によって成り立っているので支持を失えば社会の公器という地位も喪失します。

さて、新聞社に守るべき編集ポリシーがあるように、神社にも守るべき信仰があります。新聞記者に「うちの紙面はこうあるべきだ」という信念があるように、明治神宮の役職員や崇敬者にも「外苑は御祭神を顕彰する場としてこうあるべきだ」という信仰上のポリシーがあります。

だから新聞社の株主総会が参加資格を株主に制限しているのと同様に、外苑再開発の説明会の対象を崇敬者や利害関係者たる近隣住民に制限することには合理的正当性があります。

換言すれば、無制限に参加できる住民説明会を要求することは株主総会に無制限に参加させろと言っているようなものであって、そこに大義名分もなければ、新聞社にはその資格もないということです。参加を制限しているというよりも、工事の騒音の影響を受けるなど直接的に利害関係のある近隣住民だけが参加資格が認められているといった方が適切でしょう。