記事の修正
「東洋経済」オンラインの記事(野中大樹記者)
神社庁幹部による約3000万円の「横領」が発覚 横領したのは神道政治連盟・打田会長の親戚 | 災害・事件・裁判 | 東洋経済オンライン
が下記の通り修正されました。
田中氏の側近である神道政治連盟・打田文博会長の親戚でもあることからM氏は自民党国会議員との接点も多い。
【2023年5月22日11時20分追記】上記と記事の見出しで、初出時の親族を親戚に修正しました。
つまり「親族」から「親戚」に修正した訳です。
親族と親戚の違い
日常会話において「親族」と「親戚」はどっちも近い(冠婚葬祭で交流のある)血族や姻族という意味で用いられています。日常的に両者を区別して使っている人はあまりいないでしょう。だから今回の修正を見ても「何が違うの?」と思われた方も多いと思います。
しかし、「親族」は民法(725条)において
- 6親等内の血族
- 配偶者
- 3等以内の姻族
と定められています。
したがって今回の「東洋経済」オンラインの修正は、M氏が7等以上の血族だったor4等以上の姻族だった、いずれかの理由により修正したものと推測できます。ひょっとしたら関係者から「東洋経済」に対して事実の指摘があったのかもしれません。
遠い親類縁者
さて「6等以内の血族」というと、自分の従兄弟姉妹(いとこ)の孫が該当します。だから「7等以上の血族」ともなると「ひいじいさんの兄弟姉妹の孫」とか「いとこのひ孫」といったレベルになります。
また「4等以上の姻族」というと「いとこの孫の配偶者」、「自分の配偶者の甥or姪(つまり義理の甥・姪)の配偶者」、「自分の従兄弟姉妹の配偶者」などのレベルです。
このように「親族ではない親戚」というのは「すごく遠い親類縁者」です。そうすると「そんな遠い親類の不祥事の尻ぬぐいをするだろうか?」という疑問がわきます。なぜならば不正会計疑惑を無理にかばうことにはリスクが伴うからです。
落選リスク
まず小野貴嗣氏は東京都内で選出されて庁長・本庁理事となっていますので、東京都内の支持率が下落したら、田中派にどんなに気に入られていても神社庁長・本庁理事で居続けることはできません。そして東京都神社庁内の会計上の疑惑を無理に庇えば都内の神職からの支持を失うのは火を見るより明らかです。つぎの改選時に東京都神社庁長から落選するリスクを冒してまで、打田氏の遠い親類を無理に庇う必要性が小野氏にあるでしょうか?
つぎに田中恆清氏サイドは神社本庁総長は役員会の議決で選出し、統理が形式的に指名すると主張をしています。だから田中氏支持から芦原氏支持へと乗り換える理事が出ないようにし、役員(=理事)の過半数の支持を維持しなくてはなりません。その貴重な一票を持っている一人が小野氏なのです。そんな有権者である小野氏に対し田中氏が落選リスクを伴う無理難題を依頼するでしょうか?
そもそも東京都神社庁としての対応を小野氏の独断で決定することはできません。東京都神社庁の副庁長以下の役員には田中派に忖度する理由がありませんので、東京都神社庁が田中・打田派に忖度してかばっているという推理にはかなり無理があります。
そうすると東京都神社庁が普通解雇にしてから調査に時間をかけているのは、不用意に懲戒処分して逆に訴えられないように慎重になっているからと考えるのが最も合理的です。
まな板の鯉ではない
ネット等で早急な懲罰を要求している人はM氏のことを抵抗できない存在だと考えている節が見受けられます。しかし、本ブログで何度も指摘している通り、東京都神社庁の手続きに不備があれば、M氏が逆に東京都神社庁を訴えて①復職、②解雇されてから復職するまでの給与の支払い、③慰謝料、を要求することだって不可能ではありません。抵抗できない存在ではなく、反撃可能な存在なのです。
例え話をしましょう。
巫女から宮司に「A権禰宜が賽銭箱のお金で缶ジュースを買っている」と告発がありました。そこで宮司が隠れて見張っているとAが賽銭箱を開けて小銭を懐にいれるところを見つけました。宮司は声をかけて取り押さえ、社務所で自供させ、「〇月〇日 賽銭箱から160円を盗りました。それ以前にも複数回同様に横領しています。」と念書も自署捺印させました。そして即日、懲戒解雇しました。
宮司は神社庁に懲戒解雇のことを報告して終わりと考えていましたが、懲戒解雇から1週間後、A元権禰宜から弁護士を通じて以下の要求がなされました。
- 当日書いた念書は宮司に脅迫されて書かされたもので無効である
- 賽銭箱を確認しただけで、持っていた160円は自分のお金である
- 業務時間中に自分のお金で缶ジュースを買っていたことに違法性はない
- そのため懲戒解雇は不当である
- 懲戒解雇の取消と給与の支払い、慰謝料を請求する
- 取り押さえられたときに暴力を振るわれたので治療費と謝罪を要求する
- 宮司と巫女に日常的にパワハラ(暴言)を受けていたので、その慰謝料と謝罪も請求する
宮司は慌てて知り合いの弁護士に相談しましたが、
- 防犯カメラの160円を抜き取った場面はぼやけていたので証拠にならない
- 就業規則には懲戒事由に「刑事事件に関し、刑の宣告を受け裁判が確定したとき」とあったので、裁判前に懲戒解雇したのは就業規則違反である
- Aは診断書を病院でもらっており、防犯カメラの映像も抵抗するAに宮司が鉄拳制裁しているように見える
- 宮司側は当日録音していないが、Aは社務所で詰問されたときの音声を隠れて録音し、宮司と巫女がAを罵る音声だけを都合良く編集して証拠としている
このように宮司側は証拠を全く残していなかったので圧倒的不利でした。そのため示談することを選択し、Aに謝罪して懲戒処分を取り消した上、治療費、退職金、慰謝料を支払うはめになりました。Aからは「宮司を暴行罪で訴えることもできますけど、多少はお世話になったからやめてあげますよ」という捨て台詞まで吐かれ、相談した弁護士からは「軽率に動く前に何で先に相談してくれなかったんですか!」と苦言を呈される始末。
人を罰するというのは非常に難しいことであり、このように手続きを誤ると賽銭を盗まれた側が逆に謝罪して慰謝料などを支払わないといけないということだってありえるのです。「懲戒処分」とは反撃されるリスクもある「諸刃の剣」なのです。だから専門家に相談しながら証拠を集めて慎重に行わないといけません。
逆に訴えられるリスクを念頭において情報を分析すれば、東京都神社庁の対応が何ら不自然ではないことがわかると思います。