神道研究室

在野の神道研究者が神社の問題に鋭く切り込みます

神職資格の取り方

神職資格の種類

神社本庁包括下(=神社本庁に加盟している)神社の神職になるためには、神社本庁が発行する資格(=階位)が必要です。階位には5種類あります。

ここでいう「別表神社」とは旧官幣社、旧国幣社、規模の大きい神社など、神社本庁の「役職員進退に関する規程」の別表に掲げられた神社のことです。そういう神社は祭典や管理により専門的な知識が要求されるので、より難しい資格が必要になってくるというシステムになっています。

まあ難しいといっても國學院大學または皇學館大学で4年間学べば明階をもらえますので、国家資格のような難関ではありません。

個人的な意見を述べれば資格取得は決して難しくないが、その地位にふさわしい風格を身につけるために平生の修錬を求められるのが神職だと思います。

 

神職資格を取得する前に考えること

奉仕する神社が別表神社でないのであれば、権正階宮司になれます。そのため他の仕事をしながら神職をしている人は権正階までしか取得しないケースも珍しくありません。自分の奉仕する神社が別表神社なのか、どの階位まで必要なのかといった神職としてのキャリアプランを立てた方がよいでしょう。

 

あと給与のことも考えておく必要があります。

全国に約8万社の神社がありますが、その大多数は小規模で、神職が生活できるだけの給与(俸給)を支出するだけの経済基盤はありません。そういう神社の神職は他の職業をしながら神職として活動しています。こういう神職を「兼業神職」といいます。反対に神職以外の仕事をしていない人を「専業神職」といいます。

2万人いる神職のなかには、次のような苦悩を抱えている人もいます。

  • 自分の成績なら神職にならなければ都市部の条件の良い職場に就職できた。でも社家だから神社を守るために地方の条件の悪い職場で兼業しないといけない。
  • 神社から給与はでない。研修なんかは手弁当だし、神社の用事で休日がつぶれると家族から「よその家は」となじられる。
  • 神社の隣に住居があって、家族全員が不在だと氏子から「神社に用事があったのに誰もいなかった。誰か1人は留守番をしていろ」と苦情がくる。だから家族旅行には行ったことがない。

「神社はつぶれない」と思われていますが、それは神職の献身によって支えられているからです。このように神職資格を取得すれば収入が保証されるというものではありません。

「収入のための資格」を探しているのであれば、神職にはならない方がいいでしょう。

 

神職の学校

神職資格を取得できる養成機関はいくつかあります。ただし受講や入学に条件があるので次の手順で考えていくといいでしょう。

  1. 奉仕する予定の神社が決まっていて、その宮司神社庁長の推薦がもらえるか
  2. 学歴
  3. どの階位まで必要か
  4. どれくらいの期間を資格取得に費やせるか

①神社宮司の推薦がもらえない場合

   國學院大學神道学部神道学科(4年間) 明階 学士号

   皇學館大学文学部神道学科(4年間)  明階 学士号

推薦を得られない場合は原則として4年制大学に入学することになります。

ただし、入学したら自動的に神職資格取得のためのカリキュラムがスタートするのではなく、神職課程履修の手続きをする必要がありますのでご注意下さい。

社会人になってから神職を目指す人にとって4年間という期間は長いですが、0から神道を学ぶことができ、明階も取得できる神職を目指す人にとって一番オーソドックスな方法です。

神社庁長の推薦がもらえ、大卒の場合

  國學院大學皇學館大学 専攻課程(Ⅰ類) 1年間 明階

大卒(予定者も含む)で神社庁長の推薦状がもらえる場合は、1年間で資格が取得できます。推薦状には「この人物は急いで神職の資格を取得し、神社に奉仕しなくてはならない事情がある。奉仕予定神社の宮司や周囲の神職がサポートするし、本人もヤル気があるから1年で資格取得を認めてほしい」という意味があります。

だから社家などの縁故がある人は1年で簡単に資格が取れるという制度ではなく、本来4年間で身につける神道の知識を1年で学ばないといけないので、毎日びっしり講義を受けることになります。

神社庁長の推薦がもらえ、高卒の場合

  國學院大學別科神道専修Ⅰ類 1年 権正階

  京都國學院普通課程Ⅰ類   1年 権正階

  國學院大學別科神道専修Ⅱ類 2年 正階

  各養成機関普通課程Ⅱ類   2年 正階

 以上のコースは、指定された神社で実習(住み込みが基本)があります。実習により高い実務能力が養われるので修了者は即戦力と評価されてきました。

しかし、この平成20年代から実習が敬遠されるようになり、生徒数は減少傾向にあります。

④学歴不問

  大社國學館別科 1年 直階

 このコースも実習があります。

神職養成機関一覧

國學院大學皇學館大学京都國學院は学校法人ですが、他の養成機関は神社本庁が養成機関と認定した神社です。

特殊な資格取得方法

①通信教育 大阪国学院

神社庁長の推薦状がもらえ、高卒以上の学歴があれば、大阪国学院にて通信教育で資格を取得できます。年齢制限(25歳~65歳)があります。

②階位検定講習会

神社庁長の推薦がもらえるのであれば神社庁國學院大學皇學館大学が主催する講習会(約1ケ月)で直階~正階を取得することが可能です。

ただし、いきなり正階を取得することはできず、

直階講習会→直階取得→実務経験→権正階講習会→権正階取得

というように直階から1つずつ取得していかないといけません。そのため合計の講習期間は3か月くらいになります。

基本的に短大卒以上の学歴が条件になりますが、受講する階位によって若干の差があり、また主催者の判断も加味されるので詳しくはその都度、開催要綱を確認することをお勧めします。

実施時期は8月や2月など大学の長期休暇期間が多いですが、必ず毎年開催するとはかぎりません。

神社本庁 試験検定

神社本庁主催の試験に合格することで階位を授与される。

自動車免許の教習所と同じで、養成機関や講習会を受講した人は講師がカリキュラム通りに神職に必要な知識を教授するので確認程度に留めるが、独学の人は厳しく審査するというシステム。

そのため養成機関や講習会でもテストは実施するが無試験検定と呼ばれ、神社本庁の一発勝負を試験検定と呼ぶ。

授与と検定合格

國學院大學皇學館大学といった養成機関は「この人はきちんと神職課程を受講し、神職として必要な知識があることを保証します」といった証明をするのであって、資格を発行するのはあくまで神社本庁です。

そして神職資格には「授与」と「検定合格」があります。例えば「明階検定合格」とは明階のカリキュラムを修了したと認定されたに過ぎず、明階を名乗ることはできません。そこから実務経験などの授与条件を満たし、「授与」されてはじめて明階を名乗ることができます。

 

おわりに

神社を守るために神職の数は確保したい。しかし、資質に問題のある神職を増やしても意味がない。そういう悩みのなかで神職資格取得のための制度がつくられ、改正を重ねられてきました。そのため非常に複雑です。

ここでは、どこに問い合わせればいいかといった手掛かりになればと思い、概略を示しました。神職を目指す人の参考になれば幸いです。